
ブランド:ωstar(公式サイト)
発売日:2017-07-28
ランク:A
歪んだ者たちが織り成す悲喜劇。
罪と罰に相応しき雰囲気を宿した怪策。
※後半ネタバレ有り
攻略順
<実攻略順>
鏡子 → いちか → 夕莉(NOMAL → TRUE)
<推奨攻略順>
実攻略順と同じ。
感想(概要)
〇歪んだ愛
誰もかれもが歪な愛を抱えていますが、だからこそ人間くさくて良いなと思いました。歪んだ者たちがおりなす罪と罰の物語。悲喜劇として楽しませてもらいました。
〇反転による暗さの強調
ネガポジ反転というポジティブとネガティブを逆転させる画風があります。ポジが強いものを逆転させるとより強いネガになるこの現象を生かされ作品に独特な“暗さ”が宿っています。
✕実用性が低い
ヒロインの夕莉は非常に美しいです。ただその美しさは彫刻的なのですよね…なので正直そそられなっかったというのが本音です。(美しすぎると逆に使えないアレ)
〇バックログジャンプ追加
実装されたことに心底感激しています。UIのブラッシュアップは好感度が高いですね。作品対する真摯さを感じます。
まとめ
前3作はなんだかんだいっても明るく終わるのですが、本作はどこを切り取っても暗さがあります。だからこそ「罪と罰」を題材にした作品としてはこれ以上ない雰囲気が宿っています。それこそ恐しさすら覚えるほどに…
しかし歪んだ愛憎劇というのは観劇する分には良いですね。我ながらどうかと思うのですが審判を下される彼らを見ていると笑いを抑えられなかったんです。
「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」
かの喜劇王の名言はやはり素晴らしいです。人をよくとらえている。
※以下はネタバレ有感想です。
感想(ネタバレ有)
シナリオ
本作の主人公である覡夕魔は難解すぎて、もう彼に対する考察がそのまま感想になるので、各エンドを順に語り「覡夕魔とは何なのか?」で締めたいと思います。
鏡子エンド

このエンドでは2つの視点から「覡夕魔が愛しているのは誰なのか?」を紐解くヒントが得られます。
ポイント①
鏡子とのセックス中「夕莉以外にも、魅力的な女の子はいるのだ」という気づきです。ぶっちゃけ他の女の味を知っただけなのですが、逆に言えばその程度で代用できるほど覡夕莉への執着は薄いとも考えられます。
ポイント②
3P中に鏡映った自分を見て「こんな低俗で下品な快楽を満たしているのは “夕莉” ではない」と嘆くところです。この嘆きは①と矛盾するように見えますが、ここでの “夕莉” は覡夕莉ではなく、夕魔がこうありたいと思う理想としての夕莉なので矛盾しません。
2つのポイントを整理すると “夕莉” というのは理想の自分の比喩に思えます。ならば彼が愛しているのは成れたはずの自分なのではないでしょうか?
いちかエンド

夕莉エンドで明らかになる所有欲を補強するエンドですが、内面に焦点を当てる中々面白い考えが浮かびます。結論からいえば「弱者に対する所有欲求」があると思っています。
夕魔の外見の鏡は夕莉ですが内面の鏡はいちかです。いちかに卑屈さに対する分析能力の高さは明らかに知っている者のそれです。思うにいちかへのイラつきは過去母に好き放題にされた弱者である自分へのイラつきからきているのではないでしょうか?
ようは彼は弱者を所有することで強者に成りたいのです。ならば強者である夕莉にあこがれるのは道理とも言えます。
夕莉エンド

2つのエンドの考察を通すと「覡夕莉の所有」の見方が変わってきます。彼の愛は姉への恋慕などではなく、自分を強者にするための自己愛からなるものだと考えています。
「所有したいのではなく夕莉を弱者の立場に自分を強者の立場に置きたかった」という考え方が一番腑に落ちます
しかしなぜ彼はこうなってしまったのでしょうね? それはきっとこの双子が「罪と罰の少女」であるからなのではないでしょうか?
覡 夕魔(罰の少女)

彼の1つ目の不運は遺伝子の悪戯にあったことです。一卵性双生児の双子は同性のみであり、異性の双子になるケースは数学的に0と言っていいレベルでありえません。
そして2つ目の不運は環境です。父と母が彼に自信を与える機会を奪い、完全な姉と比較され続けた劣等感にさらされる宿命を負ってしまいました。
母と叔父が犯した罪への罰として男として生まれてしまった「罰の少女」それが夕魔です。
覡 夕莉(罪の少女)

彼女の外見を褒め称える言葉は浴びるほど見ましたが、逆の内面を褒める言葉は記憶に残っていません。おそらく万華鏡シリーズのヒロインでこんな哀れな女は彼女だけでしょう。
でも当たり前なんですよね。だって彼女も夕魔の内面を見ていないのですから。相手の本質を理解せず自分の理想を相手に求めそれを押し付けている。
しかし彼女がそうなってしまうのも仕方ないことだと思います。彼女が夕魔を求めるのはただ遺伝子がそう設計されているだけなのですから、どうしようもありません。
生まれながらに弟に惹かれてしまう原罪を背負わされた「罪の少女」それが夕莉です。
二人は本来一つの存在「罪と罰の少女」とは夕莉と夕魔それぞれを指すのだと思います。
エッチシーン
シーン6
保健室で咲に無理矢理
今までとは違い逆に犯されるシーンを見せられるのは斬新でした。その後の嘔吐スチルも含めて犯される側の気持ちを味わせるとは中々に悪趣味です。
シーン10
エレベータでフェラ
今回は乗り物エッチがないと思ったらまさかこんな離れ業を使ってくるとは…! スリルという共通項も10階までのすべてのボタンを押すという謎行動でクリアしている!
なんと恐ろしいライターだ吉祥寺ドロレス…いったい何が彼をここまで突き動かすのか?
シーン21
いちかちゃんとエッチ
正直一番使えた。マゾ開眼してブヒブヒいっちゃういちかちゃんが滅茶苦茶可愛かった。本音を言えばもう1シーンほしかったですね。
イメージフラワー

白百合の花言葉は「純潔」「無垢」「威厳」。花言葉としては夕莉そのものです。しかしご存じの通り夕莉という夕魔は鏡合わせの存在。ならばその対義語が夕魔を示す花言葉になります。
その対義語は「汚辱」「穢れ」「卑俗」。見事に夕魔を表していますね。この解釈があっているかどうか知りませんが、私が気に入りましたのでこれを正解にします。
それにこの解釈ならタイトル画面に花が映っていないのも説明がつきますね。中原中也の心象風景みたいな感じなので、多分夕魔の心象なんでしょうあの雪の道路は。
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