
ブランド:あざらしそふと(公式サイト)
発売日:2015-12-25
評価ランク:A
夕焼けは過去 哀愁の黄昏
朝焼けは未来 希望の暁光
※後半ネタバレ有り
はじめに
- 前作の「アマカノ」から1年後が舞台です。
- 今作から始めても楽しめますが、前作をやっているとより楽しめます。
攻略順
<実攻略順>
奏 → 涙香 → 雪静 → 穂波
<推奨攻略順>
好み優先で大丈夫です。
感想(概要)
○変わろうとするヒロイン
アマカノシリーズ最大の魅力はこれにつきると思っています。恋をキッカケに様々な表情を見せてくれる、そんな彼女たちだからこそ “愛しい” という気持ちになります。
△視野が俯瞰的すぎる主人公
物事を俯瞰的に見過ぎていて「本当に人間か?」となんどか思いました。イケメンなのは結構ですが、感情に翻弄されている独白がもう少し欲しかったです。
○濃厚なエッチシーン
前作に負けず劣らずエッチなのは流石です。ハート目エッチシーンのラストアタックにも、カウントダウンが追加されたのは地味に嬉しかったです。
まとめ
前作で不評だった胸糞展開が見事に存在しません。ユーザーの声を汲み取って即反映するその姿勢は素直にグッドです。
「ヒロインが抱える課題」が強くなっていたのもポイントが高いです。前作よりもシナリオに波があって楽しめました。一番好きなヒロインは穂波ですが、一番好きなルートだと涙香になります。
とはいえ基本はイチャラブを楽しむ作品なのは変わってませんので、コンセプト通りに「甘えたがりな彼女との恋愛」を楽しむのが吉ですね。
※以下はネタバレ有感想です。
感想(ネタバレ有)
沓野 奏

「『気配り上手』から『甘えたがり』へ」
品のいい口調とお茶目なイタズラの合わせ技で、何をやっても可愛いのが卑怯。私は「テヘペロを許せる女は強い」という持論を持っていますが奏はまさにそれですね。
ですが彼女は “強さ” こそが一番凄い子だと思っています。事故で車椅子生活になったのに腐らずリハビリを続け、手助けしてくれる周りへの感謝も絶やさない。凄まじい精神力ですよ本当に。
そういう頑張る子を応援したい気持ちは分かります。リハビリのシーンを見る度「頑張れ!」と思わず口走ったほどです。ただこのルート……『恋』は一番弱く感じました。

主人公の視点は注意深く追ってましたが、“守りたい”という気持ちがほとんどで、彼女を求めるような感情がほとんどなかったんですよね。
それは「恋人」ではなく「妹」への感情じゃないでしょうか? どうにも二人の『恋』のベクトルがズレてる気がしてあんまり楽しめませんでした。
「恋人」であるなら他ルートのように “劣情” を感じてもっと奏を求めるシーンがほしかったです。“求める” べきところで “気遣ってしまう“ ってのは何か違うように感じてしまいます。
まぁこのルートは対等性を重視している私と相性がちょっと悪かったですね……。
硯川・e・涙香

「『隠したがり』から『甘えたがり』へ」
普通ではない容姿に苦しむ「理想の生徒会長」を演じる女の子。この “ギャップ” には見事にやられましたよ……。
最初は変な喋り方をするなぁ~と思っていましたが、今となってはその喋り方も愛おしいです。
このルート距離が縮んでいく過程が凄く好きです。秘密を知る度に「生徒会長」ではなく「涙香」を知る。シナリオの進行とシンクロして “愛しい” 気持ちが強まっていく感じが実に良い……。

何より美しいところは、涙香がいままで行ってきた行動は何一つ無駄ではなかったと分かる構成なのですよね。主人公の手助けはあくまでアシストというのもニクイです。
実は「雪まつり」でトラブルが起きたとき、英語を使ってないんですよね。ですがそれを気にする者は誰もいない。それは他ならぬ彼女自身が認められている何よりの証拠。
だからこそ最後のスピーチで受け入れられたのただの必然。今までに積み上げてきた信頼が実を結んだ。ただそれだけのことです。それでも……努力が実を結ぶ瞬間はいいものですね……。
かつて特異な容姿で差別された女の子が、皆の理想であろうと頑張り、恋により勇気を得て誰からも慕われる女性へと成る。
とても晴れやかな気持ちになる変化が描かれた素晴らしいシナリオでした。
高社 雪静

「『引っ込み思案』から『甘えたがり』へ」
雪静は恋愛を通した “成長” が感じられたのが良かったです。最初は筆談しかできなかったのに、徐々に心を開いてくれて笑顔で話してくれるようになる。こういうのに弱いんですよ私。
何気に愛称呼びをしてくれるのも雪静だけなんですよね。それにこの「こーくん」って呼び方めっっっっちゃ可愛くて好きです。(全国の「こーくん」がマジで羨ましくて許せない)

このルートを語る上で “告白” はやはり外せませんね。ノートいっぱいを使って書かれた万の言葉より雄弁な二文字。これほど心揺さぶられる “告白” は中々ないですよ。
ですが最も心を揺さぶられたのは “筆談用のノート” を預けてくれるシーンです。
「一番伝えたい人には伝わるから大丈夫」
この言葉を聞いたとき感無量でした。これほどまでに信頼されているのですよ? これが嬉しくなくて何が嬉しいのでしょうか!
そして最後には自分の言葉で告白をする。“成長” の表現としてこの上のない相応しい締め方です。最後に主人公の解答が分かるのもいい演出ですね。
一ノ瀬 穂波

「『子供の甘えたがり』から『大人の甘えたがり』へ」
アマカノヒロインはみんないい子なので、穂波のような噛みついてくるタイプは新鮮で良かったです。こういうタイプが甘えてくるとどうなるかも楽しみでした。
甘え度 [-100%] から1イベント [10%] に行くので、最初はチョロインかと思いましたがある程度まで上がると急に上がらなくなるのですよね彼女。(甘え度 [120%] の壁)
今思えば心の壁を上手く表現しているなと思います。ですがそんな素直に「好き」と言えないところが堪らなく愛しいです。本作のヒロインでは “一番好き” ですね。
告白後

抱き枕抱えて悶えてる「孝輔さんしゅきしゅき」してるSDほなみんが死ぬほど可愛い! やっぱり恋する乙女の百面相を見れるヒロインビューは最高ですねぇ!!!(あぁ潤う……)
とはいえ初体験まで済まして「好き」が言えないのはよっぽどです。ですがこちらからできるのも相手が参るまで「好き」を伝え続けることだけ。地道に行くしかないですよ普通は。
だが主人公は……弾けた。
まさか校内放送ジャックからの再告白なんて荒業を使うとは!「好き」を浴びせ続けるのではなく特大の「好き」一発ぶつけるですか…… いやはやお見逸れしました。
穂波のカウンター告白も放送し退路封鎖してるのも個人的に好印象ですね。好きな相手のために手段を選んでない感じがいいですねぇ。
校内告白後

自分から「好き」を伝え壁を超えることがでた穂波の甘えっぷりは今までとは次元が違います。数値にして甘え度 [120%] から [240%] への上昇……なんと倍である!
実際その破壊力は尋常ではなく、恥ずかしがりながらも素直に甘えてくる穂波を見る度、私もサムズアップアップが止まりませんでした。
やはりいいですね……ツンケンした子がデレるのは格別の良さがあります。
ですが私は彼女の意地っ張りなところだけが好きなわけでないのですよ。恥ずかしがり屋なのに義理堅いところが彼女の一番の魅力的です。だからこそ最後の告白のやり直しは素晴らしかった。
「愛しています」
朝焼けは夕焼けと違いこれから光輝く未来への兆し。その光の中で「大好き」ではなく「愛しています」と宣誓する彼女の姿こそ、本作品における変化と成長の一番の表現ではないでしょうか。
「『子供』から『大人』へ」という変化と成長のテーマを、しっかりと描いた良いルートでした。お見事です。
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