
ブランド:Purple software(公式サイト)
発売日:2025-09-26
評価ランク:A
記憶になくともその『恋心』は永久に実在する
※後半ネタバレあり
攻略順
<実攻略順>
各種BADエンド → TRUEエンド
<推奨攻略順>
TRUEは最後にすることを推奨。
※参考攻略サイト:巫-KANNAGI-
感想(概要)
○タイムリープ作品
ループすればするほど状況は悪化し、やがて”詰み” に追い込まれる。この絶望をどう打破するのか読んでいてワクワクしました。タイムリープの醍醐味がよく描かれています。
△30歳の主人公
社会に摩耗した30歳独身男性って感じがよく出ています。好きになれない部分もありますが、年代が近いので共感しやすい主人公でした。……どうにも嫌いになれないですね彼のことは。
○物語の構成
さりげなくバラまかれた違和感が徐々に輪郭を帯びてくる感覚は面白かったですね。古典を踏襲しながら、独自の味付けがちゃんと生きているのもグッドです!
まとめ
タイムリープ作品として良くまとまっています。特に分かりやすさを重視したのはグッドですね。おかげで「二人の恋愛」に集中することができました。
個人的にはラプラの存在が大きかったなと思います。この黒猫のおかげで独特な個性が作品に宿っていました。社会人設定もエッセンスとしていい仕事をしています。
ラストは人により感想が変わると思いますが、だからこそ他の人の感想が気になりますね。いまから他の人の感想を読むのが楽しみです。
※以下はネタバレ有感想です。
感想(ネタバレ有)
1度目

本作はループに入るまでの導入が強いです。それほどまでに社会に擦れてしまった主人公に「共感」できてしまう。
そうですよね……「俺の人生何が楽しいんだ?」ってのは誰しも一度は抱きますよね。私にも覚えがあります。
そんな状況で学生時代へのタイムリープですよ? そんなの異世界転生より楽しいに決まってまるじゃないですか! 現代と比較しながら街を歩くなんて、ノスタルジー半端ないでしょうねアレ。
その上なんか記憶にない可愛い先輩と甘酸っぱい恋愛もできる。ちょっとしたバケーションにしてはボーナスが過ぎますよラプラさん!

……分かっています、分かっていましたよ、翠先輩が消えることなんて。記憶にいない以上、彼女が消えるのは当然の展開。
そうと頭で理解していても「こんなのものはあんまりだ」と感じるのもまた事実なんですよ。
理由は分からなくとも自分を好いてくれた。過去から来たことを理解しようとしてくれた。そんな彼女の存在そのものが消えるのに、何も思わないのはただの人でなしです。
夢斗が次のループを求めるのはごく当然というもの。私でもそうします。
2度目

2度目のループは改めて見ると面白いですね。この時点で真実に至るのに必要な情報はほぼ出そろってるんですよね。(「血の契束」もさらっと出てた……こわぁ)
ですが一番面白いなと思ったのは、夢斗が『消失』後の重要性に気づくのに重要である「8日目」というインターバルです。これの存在って必然なんですよね。
だって翠先輩は消滅まで1週間を切ったからこそ、悔いのないよう「今週告白する」と決めたのですから。

その結果として、告白が『消滅』を解く手掛かりになったってのは、凄く美しい構成じゃありませんか?
世界から存在が消えても一度伝えた『恋心』は実在し続ける。これほどロマンチックな話もそうそうないです。
3度目
錬金術の追走:野木沢 緑

序盤で「全知の鉄」に辿り着いたのは流石最終ループといったところですね。プレイ中は思わず手に力が入ってしまったものですよ!
それに3度目は緑との会話が増えるのも嬉しかったですね。私リクのことかなり気に入ってるんですよ。見た目はイカツイですけど姉思いのいい奴ですよ本当に。
だから夢斗の雑な態度はあんまり好きじゃないですね……年下に変なマウント意識もって雑な態度とるのはどうも好きになれません。
全知の鉄:ラプラ

正直翠先輩は純過ぎるところがあるので、エッチシーンの役割はイマイチでしたが、そこを見事にブレイクしてくれたラプラには感謝したい。
いやいいですね~上位存在がアヘアへするのはクルものがあります。特に翠先輩もシンクロしちゃう3Pはマジでよかった。これはもう設定の勝利。
それにラプラが手助けしてくれたのは素直に心強かったです。なんだか相棒が戻ってきたような感じが堪らなく嬉しかったですね。
アドバイスと一緒に「頑張れよ」って言われたときは、流石に心が熱くなりましたね! 相棒にここまで言われて頑張らないのは嘘ってものですよ!
血の契束:喜納 岳人

ただ息子を治したかっただけの父親の愛が、こじれにこじれ悲劇を生んでしまった。こういった善意が悲劇を生んでしまう物語はやるせない気持ちになりますね……。
すべての因果の起点が主人公にある。これ自体はオマージュ元もそのまんまですが、オリジナルの素材でこの展開にもってきた構成力は流石です。
BADエンド
因果応報を感じられる、このエンドも嫌いじゃありません。
でっち上げた吸血鬼という都市伝説が、巡り巡って本物の怪物を呼び寄せてしまった。実に滑稽で皮肉でおろか。ある意味これも人らしい話です。
TRUEエンド

『消失』の解決策として文句のつけようがありません。実にエクセレントな展開です。
そう、翠先輩と父親の二人の『消失』を防ぐためには、26年前の「全知の鉄の使用」を無かったことにする必要がある。そしてタイムリープ者には「自分」の上書きをする権利が許可されている。
ならばできることは一つ、26年前に父親を止めるしかありません。たとえその結果として、生涯が4歳で閉じるとしてもです。
そして何より、かつて死んだ目で社会人をしていた彼が、こんなことを言えるようになったことが嬉しい。
「大人になれたから、大人だから」
好きな人を守るために責任を追えるようになる。それが「大人になる」ということ。そうここで初めて彼は「大人になれた」のです。

実は翠先輩のことあんまりは好きではありませんでしたが、ようやくここで私にも彼女の「魂の美しさ」が分かりました。同時に命をとしてでも救うべき存在であるということも。
ずっとずっと『消失』に耐え、愛してくれた彼女の望みは「忘れないでほしい」というささやか過ぎる願いただ一つだけ……。
その願いが叶わないことがあっていいのでしょうか? 世界から消えることを認めていい理由があるのでしょうか? そんなこと……あっていいはずがないだろ!!!
だから彼女が消えない選択を選べた、喜納夢斗の意志と決断を心より尊重する。

故にこのエピローグは蛇足です。「喜納夢斗の生存」と「蝶舞翠の存在継続」はトレードオフ。両方とも叶うのは摂理の放棄であり、彼と彼女の『決意』を踏みにじる侮蔑でしかない。
理屈ではそう……思っていたんですけどね。
感情がその理屈を否定するんですよ。彼と彼女が同じ時間を歩むことができる、それが嬉しくて嬉しくてたまらない。そう感じるんですよおかしいですよね?

いや何もおかしくないですね。理屈をつけて自分の感情に蓋をしていただけでした。
「頑張った人は報われてほしい」
この感情こそが私の最も大切なもの。二人にとって一番幸福な結末であるなら、それが嬉しいのは何もおかしくない。当然の感情ですね。
それを分からないフリをするなんて……まったくまだまだ私はガキですね。
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