
制作 :アボガドパワーズ
発売日:1999-04-09
ランク:B
ただ生きているだけで人は前を向いている。
※後半ネタバレ有り
攻略順
<実攻略順>
香織 → 緑 → いろは → 歌奈
<推奨攻略順>
好み優先で問題ありません。
感想(概要)
〇独特の雰囲気
終末まで後一週間なのに緩やかに進む日常の雰囲気は、今までに味わったことのない唯一無二の独特なものでした。言葉にするなら”寂寥感”が一番近いかもしれません。
〇世界観に合った淡い画風
本作の画風でこれより相応しいものはないでしょう。淡く儚く今にも消えてしまいそうな感じが、あまりにも作品に合い過ぎています。
△プレイ時間が短い
プレイ時間は2.5hと確かに凄まじく短いです。ただこれ以上描いても蛇足な気がするので、この短さが最適な長さなんだと思います。
△ヒロインが全員眼鏡
私は眼鏡フェチではないのであまり嬉しくないですが、性癖を隠すことなく曝け出すその潔さは好感が持てます。
まとめ
私がプレイした中では雰囲気ゲーとしては最高峰です。テキスト、画風、音楽、プレイ時間のすべてが“完全調和”している本作は、一つの芸術といっても過言ではありません。
終末が迫っていますが、だからといって特別なことが描かれているわけではありません。ジャンルで言えば“日常系”です。それでも本作には「生きる」ということにおいてとても大事なことが描かれていました。
ここまで語りましたが本作の雰囲気をほとんど言語化できていません。なので少しでも気になった方はプレイすることをお勧めします。
※以下はネタバレ有感想です。
感想(ネタバレ有)

世界が終わるときに、「何をしたらいいか分からない人」を描くというのは面白い視点で作品を作ったなと思いました。本作のスケールは「世界」という「マクロ」ではなく「個人」という「ミクロ」なのですよね。
世界が終わる理由も方法も分からないけど、時間が過ぎていく焦りだけはある。この感覚は「週末に何もせず無為に時間だけが溶けていく」感覚と同じ気がしますね…。だとしたら妙なノスタルジーを感じるのも納得です。
「休日の後悔」なんてものは未来があれば「仕事だりぃ…」で済む程度のことですが、本作にはその未来がありません。ではそういう時に人はどうするのか?という問いに対する本作の答えを私は気に入っています

「死はまってりゃ向こうから勝手にくるが、生きるにはこっちが向かっていくしかない。」
「だったら生きれるだけ生きたほうが得だろ?」
本作が発売された1999年は「ノストラダムスの大予言」という7月に終末予想があった年です。その予言は今では考えられないぐらいに多くの人が信じていました。
そんな年の4月に出したメッセージとしては、これ以上ないほど前向きなメッセージです。この生きることを肯定してくれるメッセージは、今でも通じる素敵なものです。
私は弱い人間なので、これから先何もかも投げ出したくなることがきっとあるでしょう。そんな時は本作をまず思い出しそうと思います。こういう時ブログを書いているのは得ですね。
余談
実は今年2025年は1999年と縁の在る年で7月5日に案の定ろくでもない予言が出てたりします。(詳しくは”大災難予言”で調べてください)
もちろん信じてなどいませんが、終末論が信じられた年に発売された作品を、終末論が予言されている年にプレイするというのは中々乙な経験でしたよ。
それでは皆様、ごきげんよう、また会いましょう。
――良い”明日”を。
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