プレイ中:のーぶる♡バトラー

天ノ少女 感想

制作 :Innocent Grey(公式サイト) 
ランク:S 

天使に見立てた連続殺人を起点とした、殻ノ少女の偏執の終着。
シリーズの着地として、最高とすらいえる傑作
※後半ネタバレ有

はじめに

「殻ノ少女」と「虚ノ少女」の続編です。前2作のプレイは必須です。

システム

-前作と変わらないシステム
相も変わらないシステムで逆に安心します。前作よりさらに作業量は少ないので、慣れた今では苦にはなりませんでした。

攻略順

ある種の1本道ですがTrue Endを見るためには都合3週は必要になります。

難易度は高いですが自力でTrue到達も不可能ではないと思われるので、気概のある方は是非。ちなみに私は1週目でBad Endに入った時点で諦めて攻略サイトみました。

【感想(概要)】

〇見事なシリーズの終着
作品単体としてよりも、「殻ノ少女」シリーズの最終作という色が強かったように感じました。その着地は見事なもので、これほど心地の良い読後感はあまり記憶にありません。Grand End、True Endのスタッフロール時には、思わず拍手を送ってしまいました。

〇あらかたの謎の開明
作品として明かさなければならない謎について、あらかた開明されていたように思います。細かい部分をつつくと多分色々出てきますが、少なくとも私としてはこの作品の謎に思い残すものはなく、清々しさを感じています。

〇特筆した美術
前作からもそうでしたが、このどこか古さが残りながらも美しいキャラクター達は、作品の色と非常にマッチしています。また作品内芸術も美しさの仲に悍ましさを内包した、作中の評価と近い感想抱けるものになっています。こと美術に関しては業界内で抜きんでたものがあります。

△オート演出の乱用
オート演出自体は雰囲気がでるので良いのですが、問題は頻度が多すぎるので操作に制限がかるのが結構煩わしかったです。演出を入れる箇所はもう少し絞っても良かったのでは?と思います。

【まとめ】

本作の評価を一言でいうなら“素晴らしい”以外にありません。広大となった作品世界を綺麗な形で収束させられたのはお見事です。

しかしながら本作は、どうしても「殻ノ少女」シリーズの最終作という目でしか見ることが出来ず、真の意味で一つの作品として評価することはできていないかなと思います。

偏屈なことを言ってっしまえば、ここまで付いてきた奴が低評価を付けるはずがないというやつです。まぁシリーズものには良くあることです。

その考えを認識して尚、私は本ブログの最高評価をつけさせていただきます。いいと感じた感情は本物でありそこに嘘偽りはありません。そもそも今までの積み重ねを活かしたというのも、十分評価に値すべきことなのですから。

※以下はネタバレ有感想です。






感想(ネタバレ有)

シリーズ最終作ということもあり、語りたいキャラクターをベースとして感想を語ろうと思います。自分なりに厳選はしたのですが、11項目ありますので長くなります、それでもよろしければお付き合いください。

■朽木 冬子

© Innocent Grey/Gungnir All Rights Reserved.

まずは何はともあれ本シリーズの起点たる彼女から。

1作目ではそうでもなかったのですが、今では彼女が出てくるだけで心が軋みます。本人にその気がなくとも他人を魅了してしまう魔性の女。でも彼女になんの罪もありません。存在することが罪など、余程でなければありえません。

客観的に彼女の人生をみれば不幸という他在りません。ですが愛した人との間に子をけられ、死後とはいえ依頼は果たされ、幼き日に過ごした教会の近くに弔われる。

そう主観的に捉えれば、他人が勝手に憐れむほど酷くない人生なのかもしれませんね。

■時坂 玲人

© Innocent Grey/Gungnir All Rights Reserved.

本シリーズの主人公。作品が変わるたびに違う女を作ってるジゴロ探偵。

本シリーズで一番好きなキャラクターです。三作共にした分身はやはり格別ですね。主人公がカッコいい作品はそれだけでもう名作なのですよ。

本作で一番好きなシーンを挙げるとしたら、Grandの六識の手から色羽を救いだし、抱きかかえるシーンです。彼は伝えずとも行動で実の娘を守るに至った、こういう考えができる点を気に入っています。

また、本作のテーマの一つに彼の偏執の解消というものがあったように思えます。実際に色羽に気づき彼女を無事を確認したことで、彼の冬子に対する偏執は終着しているといえましょう。

■時坂 紫

© Innocent Grey/Gungnir All Rights Reserved.

本シリーズ最可愛キャラ。まずは彼女が最後まで綺麗であったこと感謝いたします Innocent Grey様。

真崎君と色々あったのに最後までくっつかなかったのは、ちょっともどかしいですがそれが却って彼女達らしいです。本人も気づかないで意識している感が可愛いです。

2度も出番のあった最強アイテム「虫の脚」を解析した隠れMVP。2作目の虚でもそうでしたが、捜査面においても結構優秀さを発揮してくれる辺り流石彼の妹といったところでしょうか。

彼女に関しては雪子との再会シーンが特にお気に入りです。多くの友を喪ってきた彼女にとって、文字通り自分の手で救った彼女との再会が特別でないわけがありません。

あのCGを見とき、ただ一言「良かった」と声を漏らしました。

■魚住夫婦

© Innocent Grey/Gungnir All Rights Reserved.

面倒見のいい武骨な警察官と喫茶店のお姉さんの夫婦。

杏子さんは虚までは玲人と色々ありましたが、なんだかんだ魚住とくっついて嬉しかったです。最後は収まる所に収まったというか、まぁ単純に殻の頃から魚住の恋は応援していたので、成就して良かったなという気分です。

■八木沼 了一

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厭味ったらしいが心は中々に熱い警視殿。元から結構好きでしたが、天にて大分株があがりました。

今回で彼の過去を知ることができましたが、あれでは偏執に囚われるのは必然というものです、それでも歪まずキャリアを積み上げて警視まで上り詰めたのは素直に凄いです。

六識脱走に割と納得いく展開だったので、その立役者たる彼は本作の個人的MVPです。後々リベンジしきるのも彼らしい。

■六識 命

© Innocent Grey/Gungnir All Rights Reserved.

本シリーズ象徴とする、神罰の代行者を語る偏執者。

彼のような作品として強い悪役は、その役割故に全てを見透かすようなキャラにしてしまい、動きが強すぎてしまうのですが、彼もその例に洩れませんね。往年の名作でも知能犯は強すぎるくらいに描かれがちなので、ある程度しょうがないのですがね。

桜田門の近くに捨てるのとかリスク高いだけの行動やらされたり、そういう彼を強く見せるための無駄に強すぎる動きがままあるのは、本作の欠点のひとつだと思っています。

■朽木 文也

© Innocent Grey/Gungnir All Rights Reserved.

想定よりヤバい人物だった冬子の叔父。

かかえている冬子への偏執が玲人よりも強烈でしかも性的方面に系統し過ぎていてヤバイ。殻のときから兆候ありましたっけ?私が忘れているだけな気もしますが…。

彼については物語動かすためにチューニングされてるよう感じて、なんかもにょるんですよね。

■真崎 智之

© Innocent Grey/Gungnir All Rights Reserved.

もう一人の主人公な探偵助手。足を使う場面や、尚織関連は彼と上手く役割分担出来ていたと思います。

まだまだ半人前感がありますが、それでも自分の考え、行動を出せており虚の頃と比べても成長を感じます。助手としてらしくなってきたのではないのでしょうか。

紫ちゃんとの関係はイマイチはっきりとしませんが是非ともくっついてもらいたいと思う一方で、実子である未散のことを知らないのは可哀そうだったなあと思います。

子が親を知る権利を持つように、親も子を知る権利があるはずです。血の繋がりが全部じゃないよってことなのは承知してますが、どうしても気にはなってしまいます。

■黒矢 尚織

© Innocent Grey/Gungnir All Rights Reserved.

虚にて消息をたった最も謎多き男。

その偏執の実態は自分の書いた小説をただ読んで欲しいという極めて無害なもの。その悲劇は如才なき人物でありながら文才には恵まれず、その偏執以外への関心があまりにもなかったことにつきます。

だから他人の願いをあるがまま叶えてしまう。これほど“虚っぽ”という言葉が似合う存在もいません。客観的にすら人生を推し量れない人物です。ただ埋められる何かがあれば、別の人生があったんでしょうね。何とも感想を口にしづらい人物です。

■前園 静

© Innocent Grey/Gungnir All Rights Reserved.

贋物を作ることそのものに偏執している修復士

序盤で御用になりましたが、本作きってのチートキャラです。本人独特の癖までコピーして完全な贋作を作る能力を持っていますが、こんなの能力バトルで出したら強すぎて依存するか破綻します。

六識命のあの異常な偏執を以てしても見破ることの出来ない、美砂の贋作を作ったとか読んでるこっちも驚きですよ。一歩間違えれば非難を浴びかねない大胆手を使ったものです。

■佐枝 色羽

© Innocent Grey/Gungnir All Rights Reserved.

本作のメインヒロインにして、本作の存在理由。“瑠璃色の鳥”→”色の付いた羽”ということで、冬子の付けた名前と共通項があるのですよね。こういうの好きです。

3週目のIn the underground girls は面白い表現方法だと思いました。2週目では誰が誰だか分からなくなった部分もままあったのですが、3週目ではバッチリ分かります。本作の次の周回で答えを出すような仕掛けはミステリーならではだなと思いました。

Trueの最後にあじ秋刀魚ボイスが流れたときもう泣いていました。あのラストで漸く朽木冬子の依頼は完了したのです。あの時の玲人の気持ちがどんなものか、それはきっと想像より複雑で驚きと喜びに満ちたものでしょう。

何よりも最高の余韻の残るいいラストでした。ここまでプレイできたこと感謝します。

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